TMG薬剤部 文献調査チーム
文献調査チームについて
2020年1月より新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の流行により、薬剤師として感染対策及び医薬品情報の収集などを行っていました。
治療薬の開発は、世界規模で行われており、既に多くの薬剤に関して論文発表されています。ところが、曲解された情報がインターネットやテレビによって配信されるケースもあります。
そこで、TMG薬剤部ではCOVID-19に関する医薬品の情報に対して、正確な医薬品情報を評価するべく2020年5月に文献調査チームを設立し、2021年3月まで活動しました。
文献調査チーム編成
文献調査チームには、薬剤師経験が2年以上および病棟薬剤業務を経験した薬剤師を目安としてグループ内の全施設より公募しました。
17施設延べ47名の薬剤師が文献調査チームに参加しています。
25名が3チームに分かれ、それぞれのチームでひと月1報を目標に、2020年8月時点までで8文献を評価しました。
文献調査方法
おもにPubMedを用いて検索された医学雑誌を評価しています。
PubMedでは、検索式として“((((coronavirus[Title/Abstract]) NOT review[Title/Abstract]) NOT protocol[Title/Abstract])) AND (((random*[Title/Abstract]) OR cohort[Title/Abstract]))”を用いて文献を検索しました。
優先評価対象はRCTとしつつ、観察研究や症例報告も対象としました。各担当者と協議のうえ評価論文を選定し、チーム毎に翻訳及び添削及び要約作成をしています。
最終的に、文献調査チームの評価を加えた「文献評価書」と「要約レター」をグループ関連病院へ発信しています。
実績
号数・配信日 | 評価薬剤 | 原著論文 |
第1号 2020/06/06 |
ファビピラビル | 【COVID-19に対するファビピラビルとアルビドールの比較:無作為化比較試験】
Chang Chen, Yi Zhang, Jianying Huang, Ping Yin, Zhenshun Cheng, Jianyuan Wu, Song Chen, Yongxi Zhang, Bo Chen, Mengxin Lu, Yongwen Luo, Lingao Ju, Jingyi Zhang, Xinghuan Wang Favipiravir versus Arbidol for COVID-19: A Randomized Clinical Trial. |
第2号 2020/06/06 |
レムデシビル | 【重度COVID-19成人患者におけるレムデシビル:無作為化二重盲検プラセボ対照多施設試験】
Wang Y, Zhang D, Du G, et al. Remdesivir in adults with severe COVID-19: a randomised, double-blind, placebo-controlled, multicentre trial [published correction appears in Lancet. 2020 May 30;395(10238):1694]. Lancet. 2020;395(10236):1569-1578. doi:10.1016/S0140-6736(20)31022-9 |
第3号 2020/07/03 |
シクレソニド | 【COVID-19肺炎に対するシクレソニド吸入の治療的可能性:3症例の報告】
Iwabuchi K, Yoshie K, Kurakami Y, Takahashi K, Kato Y, Morishima T. Therapeutic potential of ciclesonide inahalation for COVID-19 pneumonia: Report of three cases. J Infect Chemother. 2020;26(6):625-632. doi:10.1016/j.jiac.2020.04.007 |
第4号 2020/07/03 |
ヒドロキシ クロロキン |
【Covid-19の入院患者におけるヒドロキシクロロキンの観察研究】
Geleris J, Sun Y, Platt J, et al. Observational Study of Hydroxychloroquine in Hospitalized Patients with Covid-19. N Engl J Med. 2020;382(25):2411-2418. doi:10.1056/NEJMoa2012410 |
第5号 2020/07/06 |
レムデシビル | 【Covid-19の治療のためのレムデシビル-速報】
Beigel JH, Tomashek KM, Dodd LE, et al. Remdesivir for the Treatment of Covid-19 – Preliminary Report [published online ahead of print, 2020 May 22]. N Engl J Med. 2020;NEJMoa2007764. doi:10.1056/NEJMoa2007764 |
第6号 2020/08/14 |
ロピナビル・ リトナビル |
【重度Covid-19入院成人患者におけるロピナビル-リトナビルの試験】
Cao B, Wang Y, Wen D, et al. A Trial of Lopinavir-Ritonavir in Adults Hospitalized with Severe Covid-19. N Engl J Med. 2020;382(19):1787-1799. doi:10.1056/NEJMoa2001282 |
第7号 2020/08/17 |
RAS阻害薬 | 【レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系阻害剤の使用とCOVID-19入院のリスク:症例集団研究】
de Abajo FJ, Rodríguez-Martín S, Lerma V, et al. Use of renin-angiotensin-aldosterone system inhibitors and risk of COVID-19 requiring admission to hospital: a case-population study. Lancet. 2020;395(10238):1705-1714. doi:10.1016/S0140-6736(20)31030-8 |
第8号 2020/08/14 |
RAS阻害薬 | 【レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系阻害剤とCOVID-19のリスク】
Reynolds HR, Adhikari S, Pulgarin C, et al. Renin-Angiotensin-Aldosterone System Inhibitors and Risk of Covid-19. N Engl J Med. 2020;382(25):2441-2448. doi:10.1056/NEJMoa2008975 |
第9号 2020/11/18 |
デキサメタゾン | 【COVID-19による中等度~重度の急性呼吸促迫症候群患者の人工呼吸器離脱日数に対するデキサメタゾンの効果:CoDEX試験】
Tomazini BM, Maia IS, Cavalcanti AB, et al. Effect of Dexamethasone on Days Alive and Ventilator-Free in Patients With Moderate or Severe Acute Respiratory Distress Syndrome and COVID-19: The CoDEX Randomized Clinical Trial. JAMA. 2020;324(13):1307–1316. |
第10号 2020/11/24 |
トシリズマブ | 【炎症状態を示すCovid-19患者のトシリズマブとステロイドによる治療研究】
Jesús Rodríguez-Ba~no「Treatment with tocilizumab or corticosteroids for COVID-19 patients with hyperinflammatory state: a multicentre cohort study (SAMCOVID-19)」 |
第11号 2021/02/04 |
Viral vector vaccine | 【SARS-CoV-2に対するChAdOx1 nCoV-19ワクチンの有効性と安全性の評価】
Safety and immunogenicity of the ChAdOx1 nCoV-19 vaccine against SARS-CoV-2 |
第12号 2021/02/10 |
mRNA vaccine | 【SARS-CoV-2に対するmRNAワクチン-予備報告】
Jackson LA, Anderson EJ, Rouphael NG, et al; mRNA-1273 Study Group. An mRNA Vaccine against SARS-CoV-2 — Preliminary Report. N Engl J Med. 2020 Nov 12;383(20):1920-1931. |
メディア情報
2020/08/03 薬事日報 掲載
対外発表
第50回日本病院薬剤師会 関東ブロック学術大会
―筆頭発表者:川崎 浩 施設名:一橋病院―
【新型コロナウイルス感染症治療薬に関するグループ病院の活動】
今後の展望
医薬品の情報を正確に捉えるために原著論文に触れることは重要です。
特に、今回COVID-19に関しては情報がミスリードされるケースが多々あり、正確な情報を掌握するためには、多くの時間と労力が必要でした。
グループ病院の強みである人財を活用して、はじめて海外文献に触れる薬剤師にも、英語論文における医療用語や統計学の教育的支援を行っています。オンラインによる、添削、教育面の充実と初めての試みではありますが、多施設の薬剤師同士で成果を発信し続けています。
今後も、より正確な医薬品情報を収集し医療の質の更なる貢献に努めて参ります。